英語能力=英会話能力ではない!
こんにちは。
塾長の江田です。
昨今、学校での英語教育も方向転換を始め、受験界においても入試改革が行われており、英語の試験も多様なものに変化しつつありますよね。
受験のための英語から、実用のための英語に変わっていくのは良いとしても最近の流れをみていると、もやもやとして腑に落ちない点もいくつかあるので、本日は存分にぶった斬って参ります。
そもそもインプットが間に合っているという誤解
第二言語習得論の研究からいっても、大量のインプットがなされない環境では、一部の語学の天才を除いて英語習得にはつながらないことは明白ですが、なぜかインプットは十分とみなされている気がしてならない問題。
中高生のリーディング教科書とか、リスニング教科書ってびっくりするくらい量が少ないのです。
なので、そこからいきなり高度な会話やエッセイの執筆なんてできるはずはありません。
一部では、日本人の英語の勉強時間は1000時間足りていないなんて話もありますし、インプットは退屈だからといって会話一辺倒だと必要な語彙や能力が育たない可能性がありますので要注意です。
有名なGraded Readersなどのように、自分が読みやすいレベル(95パーセント以上語彙や表現がわかるレベル!)のインプットを目と耳で大量にしてみることをオススメします。
公教育で過度な英語運用力を求めるのはかえって危険では?
研究からして、インプットが足りていない問題に加え、英語を使う環境というのも日本の場合なかなか厳しいものがあります。
イマージョン教育のように全科目英語で、英語ができる教員が指導する!のような恵まれた環境ならまだしも、英語を使う機会が十分だという学校ってほとんどないのが現状じゃないでしょうか。
そうなると、各家庭がインプット教材や、英会話教室などの利用をしていかないとならなくなりますが、ちょっと待ってほしい。
公教育で完結できていないものを、各家庭の負担で補わないといけないとするならば、結局お金持ちの家庭は十分な教育投資はできるけど、家計が厳しい家庭では十分な学習機会が得られないことに繋がらないか?ということです。
いきなり入試の改革だけしても、教育の部分の改革ができていないなら、単に不公平を助長してるだけじゃないの?とも言えるわけです。
余談ですが、東南アジアなど、「日本よりも貧しい国々の方が英語教育が進んでいる」という話をよく耳にしますが、そういった国々に住まう人々は日常生活を営む上で英語が必須なので、自然と英語を使えるようになっていきます。
対する日本は日常生活はもちろん、特定の業種に就かない限り英語を使用しないと生きていけないことは無いので、英語の上達は日本よりも貧しいとされる各国よりも劣ります。
単純に教育制度の問題だけではありません。
英語能力って英会話能力だけでよいの?
英会話が必要なシチュエーションってわかりやすくて、しかもかっこよさを演出して宣伝されますので、憧れを抱いている人も多いと思います。
ですが、もっと地味なシチュエーションでも必要な英語能力もあるのです。
それが「必要な情報を英語で得る力」です。
英会話などの能力が脚光を浴び続ける影で、ひっそりと無視されているようにしか思えない能力です。
かわいそうなので思い出してあげてください。
この能力は、実は英会話より率先して身につけておくべき能力とも言えます。
特に学生。
大学に入ると必要な情報を書籍や海外の文献(論文など)から得ないといけない場合が多くあります。
日本国内で完結している学問ならともかく、例えば心理学研究は日本は比較的遅れているので、海外の研究に頼らざるを得ない一面があります。
もちろん執筆した海外の教授に直接インタビューできるほど相手は暇ではありませんので、ほとんどは読んで収集します。
それができないと学生としては失格なのですが、そもそもそれが満足にできる学生がどれほどいることやら。
大切なのは、「英語が読める」のが大切なのではなくて、「英語で(専門的もしくは必要な)情報を得ることができる」ことなのでお間違いなく。
日本語ができても「だからなに?」となるのと同じことです。
オススメの本
というわけで、総括すると日本の英語教育は振り子みたいに文法訳読に偏重したり、急に会話重視になったり、一貫性がないので困りもの。
大切なのは誰かが植え付けてくる英語のイメージではなくて、自分に本当に必要な能力は?と考えてみることのような気がします。
そして、その必要な能力の身につけ方もきちんと知っていたほうが良いです。
なにせ英会話業界は「自分はこうした!」ってだけで、それが絶対のような話をしてくる人がほとんどですので、自分で調べた方が良いです。
おすすめ本を挙げておきますので、ぜひご自身で考えてみてください。
・外国語学習の科学 白井恭弘 岩波新書
・英語はもっと科学的に学習しよう SLA(第二言語習得論)からみた効果的学習法とは 白井恭弘 中経出版
・言語はどのように学ばれるか――外国語学習・教育に生かす第二言語習得論
・パッツィ・M.ライトバウン 岩波書店
・1日10分!「英語脳」の作り方 苫米地英人
- 第二言語習得論に基づく、もっとも効率的な英語学習法 佐藤洋一 ディスカヴァー・トゥエンティワン